37号告示とは?請負と派遣の違いに注意

37号告示とは?

37号告示とは、請負契約と派遣契約の違いを明確に区別し、いわゆる「偽装請負」の防止を目的として定められたガイドラインです。

昨今人口の減少により、日本の様々な業種でも労働力不足が課題となっています。労働力を確保するために、企業が労働者を斡旋するアウトソーシングも盛んに活用されています。

発注先に企業が労働者を派遣する場合は「請負」「派遣」という2つの契約形態があり、これらは異なる法律や規則に基づいています。この請負契約と派遣契約の違いを判断するための基準として、厚生労働省が定めたものが「37号告示」です。

本記事では、37号告示の概要やその目的、違反リスクと具体的な事例について紹介しながら、分かりやすく解説していきます。

37号告示の概要

昭和61年に厚生労働省によって告示された「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」は、通称「37号告示」と呼ばれています。

37号告示の基本的な考え方としては、発注者が請負労働者に対して直接指揮命令を行った場合、労働者派遣契約と判断されるということです。しかし、契約上は請負とされていながら、実態として発注者が労働者に対し直接指揮命令を行っている状態を「偽装請負」と言います。

派遣と請負における指揮命令関係の違い

このような状況が発覚した場合、労働者派遣法に基づいた適切な手続きが求められますが、法令違反と判断された場合には罰則の対象となるケースもあります。そのため、発注者と労働者は37号告示に違反していないかどうか十分注意する必要があります。

偽装請負についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

製造請負契約の指揮命令に注意! 範囲や指揮命令者を知り偽装請負を防ぐ

製造請負契約の指揮命令に注意!範囲や指揮命令者を知り偽装請負を防ぐ

製造請負契約では、正しく理解せず指揮命令を行った場合に偽装請負となり、労働者派遣法違反とみなされることがあります。本記事では製造請負契約の指揮命令について解説します。

37号告示の目的とは

この37号告示の目的は、労働者の権利を保護し、適正な雇用関係を確保することにあります。偽装請負の状態では雇用関係の責任が曖昧となり、労働者が適切な福利厚生を受けられない場合があります。

また、労働基準法においては、他者の就業に介入し利益を得る中間搾取が原則として禁止されています。偽装請負に該当する場合、請負会社が中間搾取を行ったと見なされる可能性があり、労働基準法違反となるリスクを伴います。

請負事業者と雇用契約を結んでいる請負労働者が、自分の雇用者ではなく、発注者から直接業務に関する指示や命令をされている場合には、37号告示違反を疑うことが重要です。

37号告示の違反リスクとは

企業が37号告示に違反した場合、労働基準監督署から指導を受けることとなり、場合によっては労働者派遣法違反と見なされることもあります。偽装請負を行った請負事業主および発注者には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される可能性があり、その法的リスクは非常に高いと言えます。

加えて、偽装請負は「職業安定法」や「労働基準法」に違反する可能性も考えられます。

具体的には、偽装請負が労働基準法第6条の「中間搾取」に該当する場合「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられるケースがあります。また、偽装請負が職業安定法第44条の「労働者供給事業の禁止」に抵触する場合もあり、その場合、発注主および請負事業主には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられることがあります。

偽装請負のリスクを軽減するためには、企業と労働者が共に37号告示の内容を十分に理解し、遵守することが重要です。

37号告示の遵守に向けたチェックリスト

適正な請負契約を運用するためには、請負事業者が37号告示の要件をすべて満たす必要があります。以下に、37号告示で示されている項目を整理したチェックリストを示します。

業務の遂行管理および労務管理の主体は誰か

適正な請負契約と認められるためには、業務の遂行方法や労働者の評価に関する指示・管理を、請負事業者が主体的に行う必要があります。発注者が請負労働者に直接業務指示を行っている場合は、37号告示に違反する恐れがあります。

また、労働者の始業・終業時間、残業や休日労働の管理などの労務管理も、請負事業者が責任を持って実施しなければなりません。また、請負労働者の服務規律や配置に関して、発注者が指示を出している場合も、偽装請負となる可能性が高いため、注意が必要です。

業務遂行に必要な資金・設備の負担主体は誰か

請負事業者は、業務遂行に必要な資金をすべて自らの責任で調達し、負担することが求められます。また、請負契約においては、業務に必要な設備や備品も請負事業者が準備・支給しなければなりません。発注者から設備を借りる場合は、別途契約を締結する必要があります。

単なる労働力の提供になっていないか

37号告示に適用するもう一つの重要な要素は「単なる労働力の提供」になっていないかどうかです。派遣契約は「労働力の提供」を目的としていますが、請負契約では「専門的な技術や経験を活かした業務遂行」が求められます。単純作業のみを行い、専門性が求められない場合には、37号告示違反と見なされるリスクが高まります。

37号告示で注意を要する事例とは

実際にどのようなケースが偽装請負になるのかは、実際には判断が難しい面もあります。37号告知に対する理解を深め、偽装請負を未然に防ぐために、見極めが難しい事例を5件ご紹介します。

①作業に対する発注者からの要求

発注者が請負労働者の作業に対する変更等を要求したい場合、発注者が直接変更を指示した場合は「直接の指揮命令」となり、偽装請負に該当します。この場合は、発注者から請負事業者に対して指示を伝えることで、請負契約の範囲内で要求を通すことが可能になります。

例外としては、請負労働者に対して緊急事態に関する要件が発生した場合に限り、発注先の直接の指揮命令が認められます。例えば、病気やケガ、災害などで業務続行が困難となった場合などが該当します。以下のような指示を直接行った場合も、直ちに37号告示違反と判断されることはありません。

②発注者による請負労働者の応援

大量の注文を請負労働者だけでは処理できないとき、発注者側の労働者が請負労働者の応援をすると、実質的には派遣労働とみなされ違法となる可能性があります。発注先の労働者が請負事業主の指揮命令の下で業務が行われる場合、請負事業主が派遣元としての責任を負うことになるためです。

請負業務を発注者が代わりに行う場合は、適切な契約変更や解除の手続きにより「請負事業主が処理しなくなった業務」として処理することは問題ありません。

③管理責任者と作業者の兼任

管理責任者が作業者を兼任すること自体は問題ありません。また、管理責任者が休暇等で不在となる場合には、代理者を選任し、管理責任を代行する体制を整えておく必要があります。

通常は作業者として業務に従事していても、以下の請負事業主の管理責任者責任を適切に果たせるのであれば問題はありません。

● 作業の指示・管理

● 請負労働者の労務管理

● 発注者との交渉・調整


ただし、以下のような状況では、管理責任者としての機能が果たせていないと判断され、偽装請負とみなされる可能性があります。

● 作業により、請負労働者の管理が十分にできない場合

● 作業者が1人しかおらず、管理責任者を兼任している場合


請負契約では、請負会社内で指揮命令系統が完結していることが大切です。管理責任者の業務遂行が困難な場合は、適切な体制を整える必要があります。

④請負労働者への技術指導

請負契約では、請負事業主が労働者の業務を独立して管理する必要があり、発注者が直接技術指導を行うことは認められません。

また、新製品の開発などで請負業務が変更される場合も、発注者が直接労働者に指示を出すことは偽装請負に該当します。技術指導は、発注者が請負事業主に伝え、請負事業主が自社の労働者に指導する形で行う必要があります。

ただし、以下の場合は37号告示の例外となり、偽装請負には当てはまりません。

● 請負事業主の監督のもと、発注者が新設備の操作方法を説明する場合

● 新製品の製造開始時に、発注者が仕様や手順の補足説明を行う場合

● 安全衛生上の緊急対応として、発注者が労働者に指示を行う場合

● 請負業務の内容が変更した場合の技術指導を行う場合

⑤発注量が変動する場合

発注量が日々変動して一定でない場合でも、包括的な業務請負契約をもとに、請負事業主が自ら業務を管理し、労働者の配置や労働時間の調整を行っていれば、37号告知に違反しません。請負契約の範囲内で業務量の変動に対応することは、請負事業主の裁量の範囲内とされます。

発注量が一定でない場合でも、完成した製品の数量に応じた出来高精算を行うこと自体は問題ありません。ただし、業務を処理するための労働者の人数を基準に精算している場合は「単なる労働力の提供」とみなされ、偽装請負と判断される可能性があります。

まとめ:37号告示を参照して適正な請負契約を

製造業をはじめ、人手不足対策として請負契約を活用する場合は、厚生労働省が示している37号告示に従うことが重要です。そのためには、認定を受けた請負事業者と契約を締結することで、コンプライアンス面が強化されるだけでなく、優秀な労働者を確保できるなどのさまざまなメリットが得られます。
製造業でインソーシング・派遣事業、技術者派遣・受託開発事業を行なっている株式会社平山は、「GJ認定制度」と「優良派遣事業者認定制度」の認定を受けている請負事業者です。
株式会社平山の製造請負サービスにご興味がございましたら、ぜひ以下のサイトをご覧ください。

製造現場の能率向上・コスト削減ができる 現場改善と人材育成に特化した進化型アウトソーシングサービス

現場改善と人材育成に特化した進化型アウトソーシングサービス

株式会社平山の製造請負サービスでは、製造請負だけでなく製造現場の能率向上・コスト削減といった改善が可能です。現場で活躍する人材をお探しの方、製造工程を改善したい方はぜひこちらもご覧ください!